EMIT-Japan WebCT レター

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【WebCT Vista事始(2)】WebCT VistaとWebCTキャンパスエディションは何が違うのか

先月のWebCTレターでは、「アカデミックエンタープライズシステムとは?」というテーマでWebCT Vistaがどんな目的のもとで生まれたシステムなのか、WebCT Vistaではどんなことができるのか、といったWebCT Vistaのアウトラインをご紹介しました。

  今回は、前回ご紹介した概要をもうすこし具体的にイメージできるように、身近なソフトウェアと比較してみようと思います。すなわち、WebCTキャンパスエディションとの比較です。

最初のWebCTからWebCT Vistaが誕生するまで

みなさん良くご存知のとおり、WebCTというソフトウェアはブリティッシュコロンビア大学のMurray W. Goldbergが1995年から開発し、1996年のWWW5(第5回WWWカンファレンス)で発表したところ評判を呼んだ・・・というのが事の起こりです。WWW5でのMurrayの発表の概略はいまでもWeb上ですぐに見ることができます("World Wide Web - Course Tool: An Environment for Building WWW-Based Courses")これを読むと、WebCTの中心的な機能はすでに備わっていたことに驚きます。現在のコンテンツモジュールにあたるパスツール、用語集、インデックス、掲示板、メール、チャット、テストなど。下の画像はパスツール(コンテンツモジュール)の一つのコンテンツページの例です。

WebCTの画面

ここからWebCTが現在の姿に至る道筋には、大きく2つの方向性があります。一つはツールの改善、もう一つはコース管理に関する改善です。コース管理に関する改善はWebCTのようなコース管理システムが大学の教育システムの基盤と位置づけられていく過程と重なっているように感じます。

開発当初のWebCTはユーザの登録を各コースごとに行っていました。学生さんが2つのコースを受講する場合、それぞれのコースで独立したユーザとして取り扱われていました。コースに入るのに、いちいちそのコースのURLを呼び出して、コースごとにユーザIDとパスワードを入力してログインしないといけないようなものです。

これは先生が一つのコースをすべて自分で管理している分にはそれほど不都合はないように思えますが、WebCTが大学全体で使われだすようになると、多量のコースや、学生さんのIDを一括で管理することが難しいため、学生さんが一つのIDで複数のコースを受講できるように改良されました。myWebCTが用意されたのもこのときです。この時点で現在のWebCTキャンパスエディションの基本的な構造が完成し、外観やツールの機能に細かな改良が加えられながら現在に至ります。

このように改良が重ねられていったWebCTですが、apacheウェッブサーバにCGIによって動作している基礎の部分は1995年から変わっていません。コース管理システムの利用規模が、大学全体から複数の大学間にまで広がりを見せつつあるなか、高い拡張性をもつ止まらないシステムを実現するために、従来のWebCTの改良ではなく、次世代のプラットフォームとなる新しいシステムが開発されました。これがWebCT Vistaです。

WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaの比較(1)管理面

ここまではWebCTの誕生からWebCT Vistaの登場までを簡単に見てきました。その中で、コース管理システムの利用規模の拡大につれてコース管理やユーザ管理の方法が変わってきたことに触れました。では、WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaのコース管理やユーザ管理の仕組みがどう違うのか見ていきたいと思います。

図1 WebCTキャンパスエディションの管理構造

上の図はWebCTキャンパスエディションのコース管理構造についての模式図です。最上位の階層はサーバと書かれていますが、ここからコースが水平的に配置されます。サーバレベルには管理者ユーザがいて、コースの作成/削除、ユーザの登録/削除やコースへのアサインができることはよくご存知のとおりです。サーバレベルで管理者が行う設定変更はすべてのコースに影響を与えます。

図2 WebCTVistaの管理構造

次はWebCT Vistaの管理構造です。管理レベルが階層化されキャンパスエディションと比べてより細かい制御ができるようになりました。最上位にサーバが位置するのはキャンパスエディションと同じです。その下に「ドメイン」と「機関」「グループ」という新しい階層があって、「グループ」の下に「コース」階層がやっと現れます。「コース」の下にはさらに「セクション」という階層も追加されています。各階層の名前を見ると、大学などの組織階層になぞらえて作られたものだなという想像がつきます。

図中にある、階層の名称の右側には、各階層に置くことのできるユーザ権限が示されています。「グループ」階層まで「管理者」がいる事に注目してください。キャンパスエディションでは唯一かつすべてのコースに影響を与えていた管理者の設定が4つの階層に分けられ、それぞれの階層ごとに、例えば大学ごとの設定→学部ごとの設定→学科ごとの設定と、各コースに与える影響を細かく変更することができるようになっているのです。

階層化された管理構造によって可能になった事のわかりやすい例として、「ブランディング」があります。「機関」レベル以下の階層で、その機関のロゴ(大学の校章やロゴ)や独自のURL、独自の色指定、独自のログインページなどを指定できます。これによって、同じWebCT Vistaのシステムにアクセスしているにも関わらず、異なる大学や学部に属する学生はまったく異なるログインページやmyWebCTを目にすることになるのです。

図3 「ブランディング」によって異なる外観をもつWebCT Vistaのログイン画面

階層化された管理構造のもう一つの恩恵として、WebCT Vistaの大きな特徴でもあるコンテンツやコースの共有が可能になったことがあげられますが、これについては改めて詳しくご紹介したいと思います。

WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaの比較(2)ツール

コンテンツモジュールやディスカッションといったツールに関しては、WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaで大きな違いはありません。WebCTキャンパスエディションを使っている方なら、WebCT Vistaでコースを作成することはすぐにできるでしょう。ツールの数でいうと、キャンパスエディションよりむしろ減っているのです。いくつかのツールは統合され新しい名称を与えられたり、あるいは無くなったりしています。

たとえば、WebCTキャンパスエディションの「課題」ツール、「プレゼンテーション」ツールは「アサインメント」という一つのツールにまとめられました。「課題」と「プレゼンテーション」が合わさるとどうなるかというと、課題を学生グループに課し、その結果を先生は採点することができ、結果はほかの学生に公開することができるようになります。

そのほかにも、WebCT VistaのツールはWebCTキャンパスエディションのツールと比べると細かいところで機能向上しているところが多々あります。例えば、課題を採点しない設定ができたり、掲示板を採点の対象にしたり、コンテンツモジュール(WebCT Vistaではラーニングモジュールと呼ばれます)ではコンテンツページにコンテンツファイルとテストのほかに課題(アサインメント)、掲示板、URLが追加できるようになったり。

表1は、WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaのツールの対照表です。

表1 WebCTキャンパスエディションとWebCTVistaのツール対照表
WebCT CEツールリスト WebCT Vistaツールリスト
シラバス シラバス
課題 課題
プレゼンテーション
学生ホームページ
コンテンツモジュール ラーニングモジュール
ディスカッション ディスカッション
チャット チャット/ホワイトボード
ホワイトボード
シングルページ コンテンツファイル
カレンダー カレンダー
用語集 メディアライブラリコレクション
イメージデータベース
テスト/アンケート アセスメント
セルフテスト
CD-ROM ローカルコンテンツ
コース管理 成績表
学生管理
成績表 成績表
メール メール
コンパイル 印刷用表示
インデックス ×
ブックマーク ×
学習記録 学習記録
コース管理 レポート/トラッキング
学生トラッキング
コースの再開 ×
選択的公開 選択的公開
言語
オーガナイザページ オーガナイザページ

WebCTキャンパスエディションとWebCT Vistaの比較(3)システム構成

WebCTキャンパスエディションは、Apacheウェッブサーバ上で動作するCGIによって、その機能を実現しています。これは1995年の開発当時から変わりません。前出のWWW5 の発表で、MurrayはWebCTの機能をJavaで実装することに関心を寄せていましたが、その実現はWebCT Vistaの登場を待たないとなりませんでした。WebCT VistaはJ2EE(Java2 Enterprise Edition)に準拠したアプリケーションサーバ上で機能を実現しています。WebCT Vistaのもつすべてのデータはリレーショナルデータベースで管理されるようになりました。アプリケーションサーバにはBEA社のWebLogic、リレーショナルデータベース管理システムにはOracle社のOracle9iが採用されています。これらはe-コマースやEIP(企業情報ポータル)をはじめとする企業向けシステムで多くの実績をもつ製品で、高い信頼性と拡張性を持つことで知られています。

これにより、WebCT Vistaのシステムはアプリケーションサーバを複数用意してそれぞれにアクセスを振り分けることで性能向上を図るクラスタリング技術に対応することができるようになりました。またデータベースサーバを2重化して予期しない障害への対応をより強固にすることができます。WebCT社はWebCT Vistaのホスティングサービスを提供していますが、そこでは5台のアプリケーションサーバで負荷分散し、2台のデータベースサーバで1台が常に待機している構成を持っています。

WebCT Vistaは最新のシステム構成を取り入れ、WebCTキャンパスエディションよりもより多くのユーザ、より多くのコースを持つシステムを安定して運用することができるようになりましたが、システムが巨大になるほどWebCT Vistaサーバを安定して運用させるための高い管理スキルが求められるようになっていることも忘れてはなりません。WebCT Vistaを使ってユーザ管理やコース管理を行うユーザのほかに、Oracleデータベースや負荷分散システムなどの管理についての専門知識をもった運用スタッフが不可欠になります。

文責 CSK 岩澤亮祐
(2004年 8月)