EMIT-Japan WebCT レター

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【CIO's Metric】大学における情報基盤エグゼクティブのための座標軸

No.3 「サステイナブルな情報基盤整備のために(その2)」
今回は,大学間連携によるによる情報基盤整備についてお話ししたいと思います. WebCT のようなコース管理システム(CMS) は,北米を中心に大学教育を遂行する上で欠くことのできないエンタープライズレベルのシステムとして各大学で運用されるようになっていまして,ベンダー製 CMS のライセンス料だけでなく,ハードウェア,システム運用に必要な要員,ヘルプデスクサービスなどの教員・学生の支援要員など,多額の費用がかかるようになってきています.
 もし,各大学,あるいは,個々の大学のロケーションが異なるキャンパスがそれぞれ独自のCMSを運用するならば,多額のコストをかけなければならず,大学教育のIT化の推進者にとって大学の独自性を確保しつつ,いかに無駄で冗長な情報投資を抑制するかが重要な課題になっています.
 その解決策の1つの方向性として,北米では,複数の大学,あるいは,複数のキャンパスが共同してCMSを導入・運用するという大学間連携による CMS の活用が始まっています.

ここでは,米国オーランドで開催された第6回WebCTユーザカンファレンスでの発表を中心に,ASP (Application Service Provider)型で展開されている onnecticut Distance Learning Consortium ,複数キャンパス間での共有型で展開されている Purdue University,複数大学間での共有型で展開されている University System of Georgia についてお話しします.

なお,詳しくは,9月13日からはじまる第2回 WebCT 研究会(http://www.webct.jp/) にて報告する予定です:-)

(1) Connecticut Distance Learning Consortium (ASP型)

Connecticut Distance Learning Consortium (CDLC) は,コネチカットの 12 Community Colleges, 4 つの State University System Institutions 1 コネチカットでのオンラインプログラム,University of Connecticut を対象にした WebCT Vista の州ライセンスを契約している.

コネチカットにおいて CDLC が形成されるに至った理由は次の3つに凝縮される: (1) 他の多くの州と同じように,より使いやすい次世代の CMS への移行が必要になってきていた,(2) コネチカットの公立大学群は,連携はしているが単一組織として統合はされていないため,CMS を共同で運用することにより,新しい連携のあり方が芽生える可能性があった,(3) コネチカットには CMS 共同運用するようなコンソーシアムが存在しなかった,(4) K-12 コミュニティも参画したことで,州全体での動きになった.

背景

コネチカットでは,21世紀型の教育に必要な技術を学生に提供してきた.その投資において重要なものの1つに,Connecticut Educational Network (CEN) があり,K-20 が様々な教育アプリケーションやサービスを提供することができる広帯域バックボーンを提供している.高等教育の CMS は,CEN を必要とする重要なサービスの1つになっている.

州レベルのCMSに関するコネチカットの議論においては,コンソーシアムを対象にしたCMSの出現,その製品の価格と複雑さ,他の州での州レベルでの実現計画の存在,コネチカットでのこれまでの経験,そして,WebCT キャンパスエディションが高等教育機関において広く採用されている CMS であるという事実(75,000 FTE以上)が,大きな焦点となった.

州レベルの議論の原動力

州レベルでのコラボレーションの主要な原動力はコストであり,購入(ライセンス,年間保守),運用(実現計画,インフラストラクチャ,センターサービス,統合,データセンター要員),ユーザサポート(ヘルプデスク,教員のトレーニング)の3つがある.また,様々な組織にまたがるコミュニティが同じ土俵にのると,「均衡(いっしょであろうとすること)」が集団的行動の主要な原動力の1つとして急速に現れる.エンタープライズレベルのソフトウェアはとても高価であるために,資金的に豊かな大学しか購入できない.このことは,CMS の性能で大学を差別化するようなもので,資金的に豊かな大学だけにセントラルヒーティングサービスを提供するのと同じのように多くの参加者が感じることになる.言い換えれば,次世代の CMS により,学務情報システムとの統合やラーニングオブジェクトリポジトリ機能,よりフレキシブルなブレンディング機能,コンテンツ共有,よりよいユーザインタフェイスが提供されるとしたら,どの大学においても必要となる機能が,一部の大学だけが利用できるという状態は公平なのだろうかという疑問が湧いてくる.

また,個々の大学の CIO (Chief Information Officer, 情報担当副総長)にとってエンタープライズレベルのソフトウェアの選定と導入は,キャリアへの影響を伴うともて悩ましい問題であることを ERP の導入で学んでおり,州レベルで導入することにより,単独で意志決定を行うよりも失敗したときの CIO 自身のキャリアへの影響を弱めることができるという点も利点であることが分かった.

さらに,CMS を共同で導入することで,スタッフ共有,ノウハウの伝授,データセンター共有のチャンスが生まれることも実際的な利点である.

コラボレーションのタイミング

高等教育における CMS は必需品であり,簡単に言えば「今すぐ」コラボレーションを始めるべきである.エンタープライズレベルソフトウェアアプリケーションの共同運用を取り組み始めている州は多数ある.実際,コネチカットの州単位でのライセンスが公になったとたん,ニュージャージーやオハイオ,ノースダコタ,マサチューセッツ,カルフォルニア,テキサス,オクラホマから,いかに共同体を構築したかについて問い合わせがあった.

参加すべき人々

コラボレーション組織の構築には,参加者リスト,商品リスト(ベンダー製,オープンソースの双方を含む),投資対効果の基準が必要となる.参加者リストを作成する際はできるだけ広範囲の方々に参加してもらうことが重要である.コネチカットの場合,公立・私立の高等教育機関すべて,K-12,その他州レベルの技術グループ,州政府からの代表者を招聘した.これらすべての方々が最終的な契約主体にはならないが,このような一体感がやる気を起こさせ,次のチャンスを生み出すことになる.

コネチカットでは,上記の集団をワーキンググループに分け,提案書の作成を行った.各ワーキンググループには,各組織の重要人物(CIOや総長)が参加すべきで,自分の組織にとって何がよいのかを評価する方法を理解しておく必要がある.また,上司や最終決定者に直に価値を説明できる人々も必要である.また,その人たちが,州のリソースが限られている点や,共同活動の方針,テクノロジ管理の全国動向のような,より広範囲の事項に基づいた調整を行うことに理解を示すことも重要である.

(2) Purdue University (複数キャンパス間での共有型)

背景

Purdue には4つのキャンパスがあり,West Lafayette では WebCT CampusEdition を使用,Calumet では Blackboard を使用,North Central では CMS 使用,そして,Fort Wayne では WebCT Campus Edition を使用,というように,それぞれが独自の判断で CMS を運用してきた.これらを,WestLafayette に設置した WebCT Vista の単一システムとして運用することで,45,000 人の学生に対するサービスを提供するためのリソース・コスト・サポートを共有することになった.

コラボレーションの流れ

キャンパス間のコラボレーションを容易にするため,サービスレベル合意事項を統治グループが作成した.まず,各キャンパスは独自の1次ヘルプエリアを構築した.また,他のキャンパスとの密な連携がある2次ヘルプエリアを現在持っている.この2次ヘルプエリアで解決できなかった問題は,WestLafayette にあるプロジェクトチームに送られ,すでに検討がなされている問題かどうかを判断し,問題が未解決のものであれば,WebCT 社のプレミアムサポートに送付することになる.

コラボレーションの内容

エンドユーザに対するサポートを提供するユーザサポートと,システム運用に関する技術サポートの2つのグループを構成した.また,誰でもアクセス可能な Vista Spot を Vista 上にセクションとして構築し,利用方法,機能リクエスト,バグに関する情報を提供している.また,各グループ用のメーリングリストを用意し,バックアップやテンプレートの移動のようにシステムに負荷がかかることを行っていることを知らせるなど,様々な情報を交換している.さらに,毎週,隔週,あるいは毎月の電話会議あるいは face-to-face の会議を開催したり,インスタントメッセンジャーを使ってコミュニケーションを行っている.

統治グループのもとで,Learning Context Hierarchy を共通にして,すべての教員用のコースを開発している.

(3) University System of Georgia (複数大学間での共有型)

University System of Georgia (USG) は,ジョージアにある 34 の公立カレッジ・大学および159郡にある公立図書館で構成されている.この USG において,WebCT Vista の利用のためのプロジェクトが Georgia VIEW (VistaImplementation Enterprise Wide) である.

Vista 運用状況

Vista 1.2 を用いた最初の大学向けシステムが East Georgia College において2003年1月から運用を開始した.2004年1月には,7 大学が Vista の利用を開始し,2004年5月からは4大学が,2004年8月には5大学がさらにVistaの利用を開始した.そして,2005年1月からは Vista 3.0 での運用を行う予定である.

実運用サーバは,Athens にある University of Georgia と Atlanta にあるGeorgia State University の2カ所に配備され,テストサーバが Statesboro にある Georgia Southern University に配備されている.

組織構成

GeorgiaVIEW プロジェクトは次の7つ組織により構成されている: (1) 機能面・技術面での専門知識を提供し,日々の運用に必要な技術的な問題を解決する ore Team, (2) 戦略的なトップレベルの方向性を定め,障害を取り除いている Executive Steering Committee, (3) 地域全体あるいはある特定の地方の両面に関する問題を特定し,解決策の案を作成する Vista Oversight Committee, (4) 機能的なアプリケーション問題や懸念,ユーザサポートやトレーニングに関連するタスクを行い,問題を解決する Functional Sub-Team, (5) ハードウェア,ストレージソリューション,システム管理,ネットワークトポロジに関連するタスクを行い,問題を解決する Infrastructure Sub-Team, (6) Oracle,WebLogic,Vista アプリケーションに関連するタスクを行い,問題を解決する Application Sub-Team, (7) SIS,Portal,サードパーティのシステムや PowerLink に関連するタスクを行い,問題を解決する Integration Sub-Team.

コースコンテンツの共有

USG では,教材共有を促進するため,既存のオンラインコースをもとに,細かく分割されたラーニングオブジェクト化する eCore プロジェクトも行っている.これにより,教員は必要なラーニングオブジェクトを検索し,組み合わせ,新しいコースで再利用することができるようになり,ディジタルコース教材を開発するために必要な時間とリソースを著しく削減すること可能になる.現在,22 のオンラインコースが eCore にはある.

文責: 梶田将司 株式会社エミットジャパン代表取締役/名古屋大学情報連携基盤センター
(2004年 9月)