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【WebCT活用事例】九州大学 平野(小原)裕子先生

今回のWebCT活用事例は、九州大学医学部保健学科の平野(小原)裕子先生を紹介させて頂きます。今回のテーマは「コミュニケーションによる学生のエンカレッジ」と「WebCT利用による期末試験結果の改善」です。
平野先生が担当されている医療社会学系の講義は、1つの問いに対して、答えが1つで ないことが多く、複数の答えがあることを皆に理解させることが非常に重要な科目だ とおっしゃいます。

今回のWebCT活用事例は、九州大学医学部保健学科の平野(小原)裕子先生を紹介させて頂きます。

平野先生は、医学部保健学科の前身である医療技術短期大学部時代から、看護学科の専門科目「社会福祉」においてWebCTの利用を始められました。現在は、九州大学の全学教育科目「医療と社会」および、「家族論」において、WebCTを利用されています。今回のテーマは「コミュニケ ションによる学生のエンカレッジ」と「WebCT利用による期末試験結果の改善」です。

平野先生が担当されている医療社会学系の講義は、1つの問いに対して、答えが1つでないことが多く、複数の答えがあることを皆に理解させることが非常に重要な科目だとおっしゃいます。医療従事者となる者は、患者の持つ疾患の特徴だけではなく、病気に対する患者の思いを理解しなくてはなりません。更に患者のもつ様々な社会的な背景によって、一つの病気に対する人々の考え方が違ってくるため、テキストをただ丸暗記するのではなく、物事を複眼的にとらえるトレーニングが必要になってきます。このトレーニングを行うために、平野先生は担当の講義の中で、WebCTの、ディスカッション機能、メール機能といった双方向コミュニケーションツールを非常に有効に活用されております。具体的な使われ方としては、講義の中で問題を設定して、講義の中で話し合えなかった時に、講義の時間外で話し合うというスタイル。ディスカッションならば、好きな時にアクセスできるので、時間を拘束するようなチャットより、ディスカッション機能の方が人気があるようです。ディスカッションは、他者の持つ様々な考え方に触れることができるので、物事を複眼的にとらえるトレーニングをするには絶好の機会となります。また、平野先生とご一緒に、オムニバス形式で講義をなさっている先生も、「学生のメールによって、様々な学生の意見が分かるようになった。」「学生の声が自分の講義への指針となった。」とおっしゃっており、学生の声がメールで先生に簡単に伝わるようになり、それが結果的に講義の改善へとつながっているようです。

ただ、これはWebCTというツール自体のおかげではなく、あくまでも平野先生がうまくWebCTを活用されているからなのです。先生の利用方法の中で感心したものの1つに、WebCTのディスカッション機能を使った自己紹介があります。通常、講義に行くと、自分の友達数人を除いては、どこの誰だか分からない人が一緒に講義を受けている、というのはよくある光景かと思います。先生の一方的な話だけで終わってしまう講義ならば、どこの誰と一緒に講義を受けてもあまり関係ないでしょうが、平野先生の講義の場合そうはいきません。先生の講義では、前述の通り、ディスカッションが重視されるのです。しかし、どこの誰かも分からない人と、ある話題についてディスカッションしろと言われても、ちょっとハードルが高いのではないでしょうか。平野先生の場合、ディスカッション機能を利用した自己紹介という双方向のやり取りを通して、クラスみんなが、お互いの背景や考え方、授業を選択した動機などが分かるようにもっていくという方法で、“未知の人”を解消し、お互いにディスカッションする抵抗感を取り除いておられるのです。このような方法でディスカッションに対するハードルを下げ、講義の活性化へとつなげられているのです。先生の講義ではこのようにディスカッションが活躍しており、ディスカッションを通して、学生自身が物事を多面的に見ることが可能になり、また1つの問いに対して多くの解釈が存在し、かつ他人の色々な考え方が理解できるようになったとおっしゃいます。最終的には対面でディスカッションができるような雰囲気を作ることを目指しているとのことでした。学生たちにとっても、ディスカッション機能の評価はなかなか高いようです。(表1)

表1.WebCTの機能評価
ディスカッション「役にたった・どちらかといえば役にたった」 93%
講義ノート「役に立った・どちらかといえば役に立った」 79.7%
テスト・アンケート「役にたった・どちらかといえば役に立った」 77.2%
メール「役にたった・どちらかといえば役に立った」 37.9%

* 「WebCTを使用した講義評価に関連する要因(平野(小原)裕子, 大喜雅文,九州大学医学部保健学科紀要,No.2,pp.57-72,2003)」 の表1から抜粋

また、ディスカッションやメールといったITツールの利用により、先生と学生とのハードが低くなって、双方向のやりとりが活発になり、結果として心理的距離がとても短くなったことを実感しているとおっしゃいます。学生は、携帯のメールと同じ感覚でWebCTのメールを使っているのではとのこと。出席の状況などを聞きにくる学生や、先生にメールを送って、あらかじめ講義を欠席する断りを入れてくる学生もいるほどだとか(なかなか普通ではないことですね。)。先生は、学生からの意見にすぐに返信するよう心がけておられ、これは大変だが、双方向の交流があることは、教師と生徒の人間関係を固めるとおっしゃいます。先生と学生の心理的距離というものが、すなわち講義でのディスカッションを妨げていたハードルなのでしょうから、心理的距離が縮まったことが前述のディスカッションの活性化へとつながっているとも言えるでしょう。鶏と卵の関係のようで、もしかしたら実際は1つ現象を別の側面から見ているのかもしれないですが、とにかく、とても素晴らしい(相乗)効果であることは間違いありません。

この「教師と生徒の人間関係を固める」という平野先生の言葉を裏付けるように、WebCTの使用前に比べ、導入後は実際に学生と顔を合わせる頻度が増えたとおっしゃいます。先生の印象では、メールで頻繁にやりとりしている人ほど、会って話す機会が増え、メールでやり取りしている部分があるにも関わらずトータルとして会う機会が増えたとのことです。またWebCTを使った講義に対して、学生から「四年間大学の講義を受けてきて、こんな面白い授業はなかった」と言われることがあり、これはまさに教師冥利につきることだとおっしゃいます。

上記の表1の学生の評価を見てみますと、コミュニケーション機能の他に、もう一つ学生からの評価が高かったものとして、講義ノートとテスト機能があります。これが、今回是非ご紹介したい2つ目の話題です。WebCTの利用状況と期末試験の結果との関連です。

まずは表2をご覧ください。

表2: WebCTの利用状況と期末試験の点数との相関
WebCT利用内容 「問題1」得点 「問題2」得点 総合得点
「講義ノート」へのアクセス回数 .020 .129 .067
「講義ノート」へのアクセス期間 .194 .157 .214
「テスト・アンケート」へのアクセス回数 .509 .406 .524

表2で注目して頂きたいのは、WebCTのテストへのアクセス回数と、期末試験との間に、非常に強い相関があるということです。つまり、WebCT上の模擬テストにより多くアクセスした学生において、期末試験の結果が良かったのです。またWebCTを利用した学生と、そうでない学生の間に期末試験で統計的に有意な差が認められたという平野先生たちの報告(九州大学医学部保健学科紀要, 2003, 第2号, 47-56“WebCT利用状況と学習効果に関する研究”平野先生、大喜先生)があります。上記の先生たちの研究報告を拝見しますと、「期末試験の勉強の際にWebCTを利用したと回答した学生において、利用しなかったと回答した学生よりも有意に期末試験の得点が高いことが明らかになった。」とあります。試験問題自体は、WebCTを全く利用しなくても十分解けるように配慮されていたことを考えると、教科書や副教材も一通り勉強した学生が、試験前の力試しとしてWebCT上の模擬テストを利用して効率よく復習した結果、より高い得点獲得に結びついたのではないかと思われます。

平野先生は、このようなWebCTを使った講義で成果をあげられていると同時に、「パソコンを使いたくない人、e-learningをしたくない人の存在も大事にしなくてはいけない。オンラインではなく対面で話したい人も尊重したい。WebCTにアクセスしたくない人の存在も重要で、利用を強制したくはない。」とおっしゃっており、1割程度を占めるe-learning否定派の学生も尊重されています。

平野先生も、他の先生同様に、e-learningツールはあくまでも対面授業を補完するものとして位置付けておられます。まず、対面授業ありきで、授業で分からなかったところ、就職活動などでやむを得ず欠席してしまった箇所をWebCT上の教材によって補完するというお考えです。

さて、平野先生がWebCTを使ってみようと思われたきっかけは、2002年九大情報基盤センターの井上先生と、多川先生が当時の医療技術短期大学部でWebCTの紹介をなさって、WebCTのデモバージョンである交通標識のサンプルが大変面白かったことだそうです。ゲームの感覚で学習が進むのであれば、学生がもっと勉強するのではと思われたとのこと。

(※井上先生と多川先生のサンプルコンテンツは、先生方のご好意により公開させて頂いております。ご覧になりたい方は、info@emit-japan.com までお問い合わせ下さい。)

九州大学においては、先ほど紹介させて頂きました、情報基盤センターの井上先生、多川先生が学内でのWebCT普及のため、大変なご尽力をなさっております。具体的な取り組みや、管理者としてのご意見を伺うことができましたので、来月号でご紹介させて頂く予定です。これから学内へ普及させる立場の先生方には是非参考にして頂きたいと思います。

ここで話を平野先生に戻しまして、先生にWebCTに追加してほしい機能をお聞きしたところ、携帯電話からアクセスできる環境がほしいとのことでした。特に、緊急時の連絡用として。通常、講義の最終レポートを提出して、そのまま長期休暇に突入することが多いため、学生がレポートを出したつもりになっていて、実際に提出されていない場合など、学生の評価ができなくなってしまうため、是非この機能は追加して欲しいということでした。WebCTと携帯電話による連携は、早期実現を目指していきたいと思います。

また、テスト問題を作成する際のユーザーインターフェイスの改善も、今年度中を目処に取り組みたいと考えております。

WebCTを導入されるにあたり対投資効果(価格に見合った効果をあげているか)をお聞きしたところ、「全学的に取り組めば非常に効果があると思う。向いている教科とそうでない教科がある。少なくとも私の講義ではクラスが活気付いている。全学の1/2とか1/3くらい利用され、学生が講義に満足するようになれば、学生に活気が出てくるのではないか。(今は活気の面でちょっと物足りなさを感じられているようですが。)学校にとって最も大事なのは活気。知識の詰め込みだけではなく、学生がITツールを活かして、意欲的に学習すれば、それは十分な効果がある。」とおっしゃいます。

最後に、e-learningの今後の発展についてビジョンについて平野先生にお聞きしました。先生は携帯電話を用いて、一般の方向けに健康情報コンテンツを発信したいとお考えです。また、携帯電話のメル友のシステムを使って、一般市民が一般市民の健康を支えられるようなシステムができればよいとおっしゃいます。初めての出産を控えた人は、非常に不安が多いので、メル友のシステムを使ってお互いに助け合ったり、また、専門家が必要に応じてカウンセリングをしたり、アドバイスを送るようなシステムだそうです。このように、平野先生は一般の人が健康を高めていく意識を啓発するためにITを活用したいとお考えです。弊社としましては、このような素晴らしいシステムの実現に向け、ご協力できばと考えております。

大変お忙しい中、インタビューに応じて頂きました平野先生に、この場を借りて御礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。

文責: 小村道昭
(2004年 10月)