EMIT-Japan WebCT レター

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【WebCT活用事例】熊本大学 安浪誠祐先生

今回のWebCT活用事例は,熊本大学大学教育機能開発総合研究センターカリキュラム開発部門の安浪誠祐先生をご紹介させて頂きます. 今回のテーマは,「WebCTを基盤としたCALL教材とHotPotatoesの活用」〜一歩進んだ使い方〜です.

ツールの長所で他のツールの短所を補完

今回安浪先生のお話をお伺いして,大変関心されられたのは,CALL教材,HotPotatoes,WebCTのそれぞれの良いとこ取りをして,逆にそれぞれのツールの不便なところを他のツールの長所で補うことによってシステム全体として非常にうまく利用なさっている点です.
所詮,世の中に万能なツールなど存在するわけがありませんから,無理にWebCTだけで全てを片付けようとして苦戦することなく,それぞれのツールの長所と短所を上手に組み合わせるという発想で,トータルなシステムとしてうまく機能させるという工夫は,今後WebCTを使っていかれる中で多くの先生方が出くわすであろう問題点を回避する一つの方法として是非参考にして頂ければと思います.
安浪先生の各ツールの長所,短所の補完を簡潔にまとめると以下のようになるかと思います.

  • CALL教材では,学生個々の細かい学習状況が分からないので,WebCTを利用する.
  • WebCTでは,クイズが作りにくいので,HotPotatoesを利用する.
  • HotPotatoesでは,答えが見えるので,WebCT上で提示する.

これらの関係を図1に示します.


図1 WebCTを基盤としたCALL教材とHotPotatoes連携

CALL教材とWebCTの結合

では,これから上記内容の詳細についてご紹介します.
安浪先生のいらっしゃる熊本大学と言えば,WebCTの全学的な導入が進んでおり,また全国的に高い評価を受けているSOSEKIと呼ばれる学務情報システムとWebCTとの連携も実現しており,CMSの大規模運用に関しては多くの大学のお手本となっているところかと思います.
安浪先生ご自身も,WebCTに関しては非常に早い時期から関心をお持ちになり,4年前熊本大学に赴任された当時から,やりたいこととしてWebCTを挙げられていたというほどです.
第一回のWebCTユーザカンファレンスが開催される前の年から,名古屋大学で行われていたシンポジウム「迫り来るe-Learningの時代」などに参加なさっていたそうで,名古屋大学の梶田先生によるWebCTの日本語化作業が行われるよりも前からのWebCTをご存知でした.

もともと安浪先生は,CALL(Computer Assisted Language Learning)を担当され,コンピュータを使った英語教育を実践なさっています.このCALL教材(ALC NetAcademy)を活用した授業自体は,2001年から実施されているそうです.発足当初はCALL教室内のPC端末でしかCALL教材の学習ができなかったものが,2004年度には学外のPC端末からCALL教材学習を可能とするVPN接続サービスが開始され,学生はどこからでもCALL教材学習が可能な状態になっているそうです.前学期と後学期で800名もの学生が学外から学習を行っているとのことです.
さて,このようなCALL教材ですが,「これには学習時間に関する履歴管理機能が備わっているだけで,学習を管理するような機能が付加されていないため,CALL教材学習をより効果的なものにするために,WebCTが持つ機能を補完的に利用することが必要である」とおっしゃいます.

HotPotatoesで作成したクイズをWebCTで利用

また,安浪先生はWebCTをご利用になる前からHotPotatoesというクイズソフトを利用されていました.このHotPotatoes,には“Export for WebCT”というのがあり,これをWebCTと結びつけると何ができるのか非常に興味を持っておられたそうです.
WebCTに比べテストを作るのが簡単で使いやすいというのがHotPotatoesをご利用になっている理由です.多くの先生はこちらを利用されているそうですが,しかし,ここで1点問題があり,HotPotatoesを使って問題を提示した場合,Web上のページでソースを見ると答えまで見えてしまうのだそうです.
従って,セキュアなテストを実施する場合には,HotPotatoesで作成した教材ファイルをテキストファイルにしてWebCTに読み込むようにされているそうです.
「Hotpotatoesは答えが見るから使っていない.答えが見えないようにするにはどうしたらいいかと考えてWebCTを使うようになった.」とおっしゃいます.
つまり,クイズ作成は簡単だがセキュアでないHotPotatoesと,セキュアだがクイズ作成が易しくないWebCTを組み合わせることで,クイズ作成が簡単でかつセキュアな環境を実現されているのです.
なお,WebCTを使って簡単にクイズを作成したい場合,

  • WebCTのクイズフォーマットに従ってテキストベースで編集する
  • エクセルなど任意のツールでクイズを作成し,スクリプトを使ってWebCTのクイズフォーマットに変換する

といった方法もあり,WebCTでも比較的簡単にクイズを作成することも可能です.
自分にとって最適なツールを使って,作業を効率化するということが重要なのだと思います.

なお,このHotPotatoesがどのように使えて何ができるのか,WebCTとどうやって連携して利用するのかについてご興味をお持ちの方は, 6月3,4日に東京で開催されます第3回日本WebCTユーザカンファレンスの安浪先生のポスターセッション「教材作成ツールHot Potatoesを用いたWebCT用テストの作成について」に是非お立ち寄り下さい.
以下は,インタビューの際,研究室で見せて頂いたWebCTの画面です.

図2 HotPotatoesをWebCT上で利用した画面

現在,安浪先生の講義ページを拝見しますと,「CALL+WebCT」や「リスニング on WebCT」などがあり,以前のようなカセットテープを使った学習から,すべてWebベースに移行されたのだなというのかよく分かります.WebCTをポータルとして,色々な使い方ができるのだとおっしゃっていました.

WebCTの更なる拡張

これまで紹介してきましたように,WebCTと他のシステムを結びつけ発展的な使い方をなさている安浪先生ですが,熊本大学では,WebCTを更に拡張して,他にはない優れた機能を付加されています.
ここで実際の図をお見せできないのが残念ではありますが,

  • CALLサーバに蓄積された教材の学習履歴の時間を抽出してWebCTに表示する
  • 授業時間と自習時間を棒グラフとしてWebCTに表示する
  • 上記のデータに関し,ある学生を指定し,その学生の時系列の学習状況を表示する

と言ったような大学独自の解析ツールが拡張されています.
1項めの学習履歴の確認は,自分自身のデータについてはWebCTのデフォルト機能として備わっていますが,熊本大学では他の学生の学習時間も色分けして表示されるようになっているため,学生は自己の学習程度を認識することが可能となっているそうです.
また先生側としても,全クラスの学習状況が分かるため,自分が担当されいる学生が他のクラスと比べてどうなのかといった点まで,色分けされた分布図により非常に分かり易くなっています
このようなデータにより,教員の学生一人ひとりに対する指導がより的確なものとなり,学生側は自分の学習の程度を認識することができ,トータルな学習試支援ツールとして機能するようになると安浪先生はおっしゃいます.

授業でのWebCTの活用

ここでは,安浪先生の授業での利用方法をもう少し詳しくご紹介します.
安浪先生のWebCTの使い方は,講義ノートをWeb上に載せるのではなく,音声と動画を利用して,Web上で英語を繰り返し聞くための反復用として利用されています. テープレコーダと紙のテストを使っていた時代に比べると,とても簡単にテストができるし,何度も受けさせてもよい設定ができるところも非常に便利だとおっしゃいます.

また,安浪先生はテストを受けさせた後,必ず学生に分布を見せるようにされています.これは,先生が勉強しろとうるさく言うよりも,学生は今自分がどこにいるか分かったほうが自分でどうすべきかを考えるのでよいという理由からそうなさっているそうです.
HotPotatoesは,ソースを表示することでテストの答案が簡単に見れてしまうので,WebCTの方がテスト機能が優れているとおっしゃいます.「ただし,回答が下の方にあるので,右にほしい.これが設定できると非常にうれしい,回答が直打ちできるとよい」などの改善点についてもコメントを頂きました.
また,操作性については,「3.8の頃は非常に煩雑だったが,4.0になって使い易くなり,自分で手順をメモしなくても見た感覚で作れるようになった.WebCTは標準I/Fを使うので使いづらいが後で裏技を覚えると使いやすい」と感想をおっしゃいます.
インタビューの際には,用語集の一括インポートをご紹介させて頂き,大変喜んで頂きました.
弊社としても,より多くの皆さんに,もっと便利な使い方を知って頂く必要があるなと実感致しました.

WebCT導入による改善点

WebCTを導入することによって一番変わったのは,コース作りを通して,“授業を作ったという実感,自分で作ったという実感,充実感が自分として持てる”ことだとおっしゃいます.また,ネットワーク環境さえあれば,どこにいてもコンテンツ作りができるので,ずっと研究室に残ってやらなくていいし,学生の立場としても,急に欠席する場合,家から勉強することができ非常に便利だとおっしゃいます.
非常に面白いのは,WebCTを利用するようになられてからは,出張した時でも休講にしないというユニークなスタイルだそうです.
出張でも,学生が教室着く頃を見計らって,例えば空港からインターネットを経由してWebCTのメール機能を使って授業時間中に学生が取り組むべき課題について指示されるそうです.そうすると、教室にいてもいなくても済むようになるので,安浪先生の講義は休講がないとか.
また,上述の通り,テストを何度でも繰り返し受験できるようになっているので,100点になるまでテストを繰り返す学生がおり,非常に学習効果があがっているとおっしゃいます.
しかし,テストの答案を見ると,時間をかけたからいい点が取れるわけではなく,聞いても聞いても分からない人がいて,テスト結果には英語という科目の特徴がよく表れているようです.
ただ,残念なことは,授業中の多くをCALL教材とWebCTのテストに費やすため,最初と最後の5分しかしゃべる時間がなく,しゃべり過ぎると勉強する時間がないと学生に言われるので,ご自分のキャラクターを出す時間がないという悩みをお持ちです.

コンテンツの問題

多くの先生が悩まれるであろう,コンテンツ素材の問題,英語の先生の場合には,発音された音声や動画ということになるかと思うのですが,安浪先生の場合はVOAを使ってらっしゃるということです.VOAはパブリックドメインで有名なコンテンツのようですが,実際これを探し出すまでが大変だったとおっしゃいます.
著作権フリーを探す,または自分で独自に作るのが大変で,eラーニングが普及していくにはコンテンツが一番問題とおっしゃいます.
「作り方は分かったが何を載せたらいいかという問題が難しい.教科書の一部を載せてもいけないし,自分で考えて本を書くような感じになる.電子媒体の場合,参考文献としてあげるのはいいが載せると問題になる.コンテンツを自主開発できる能力があるかどうかが問題になる.」と,eラーニングにおけるコンテンツの問題を指摘されます.
熊本大学の場合どうなさっているのかお聞きしたところ,「情報基礎」では自分達でコンテンツを作られているとのこと.章ごとに担当を分けて作り,最後に誰か一人が全体をっ確認するという方針になっているそうです.先生方の協業による負荷分散でのコンテンツ作りです.
また,著作権の問題も難しく,「やろうと思えば何でもできるが,やってはいけないことを教えなくてはいけない.例えば,遠隔で同時間帯ならいいが,後からみるとダメなどの規制があるし,また,以前は著作権の承諾を得ず,テレビの画像を使っているケースがあったそうでこの辺も難しい問題だ.」とおっしゃいます.
また,安浪先生は文系でのWebCT普及の中心的な役割を果たされており,「使いかたは説明できるが,どうやったらいいかを教えるのが難しい.やりたいことは個々に異なるし,ただ,WebCTの操作を覚えただけでは意味がない.まず個々の先生の意向を聞いてから,どうやったらいいかを考えていく.」と話され,普及者の立場としてのご苦労もあるようです.
場合によっては,自ら共同デザイナとしてコース作りのサポートまで行っておられます。

今後の発展について 〜コンテンツに求められるもの〜

最後に,安浪先生に今後の発展についてお話頂きました.
ここまでご紹介してきました通り,安浪先生のところではシステム的な基盤は既にしっかりとできており,今後はコンテンツに力を入れていきたいとお考えです.
「そもそも日本では、eラーニングというものが十分に理解されていない.どういうふうにやるのがeラーニングか?が十分理解されていないように思う.ビデオを流してパワーポイントの資料を貼り付ければ,これがeラーニングだという人もいるが,私や中野先生(総合情報基盤センター)はそれこそがeラーニングだと思っていない.eラーニングの定義自体が非常に曖昧のように感じる」と, 現状の問題点を指摘された上で,安浪先生としては,「コンテンツをインタラクティブにやっていくのがeラーニングだと考えている.どうやってコンテンツを配信するかが問題で,IDを使うなどして,教材をうまくインタラクティブ性を持たせながら展開できるかどうかで成功が決まる.」とおっしゃいます.
また,「eラーニングは,学習者対単なる機械ではなく,コンピュータの向こうにインストラクタのような人がいることが大事.機械だけに頼ってもいいが,その向こうに人間がいないと学習者は面白くないので,コンテンツに人間味をどうやって出すかが大切.単純にテストの結果などが分かるだけでなく,それに対してコメントなどが必要だと思う.」と今後のコンテンツ作りの方向性について話してくださいました.

最後になりましたが,大変お忙しい中,インタビューに応じて頂きました安浪先生に、この場を借りて御礼申し上げます.ご協力ありがとうございました.
実際のインタビューは2時間近くに及び,ここにご紹介させて頂いた以外に,他のシステムについても面白いお話をたくさんお聞きできたのですが,記事の性質上今回は割愛させて頂きました.

(2005年 5月)